『黄金の丘で君と転げまわりたいのだ』(三浦しをん、岡元麻理恵著)|三浦しをん×ワイン入門エッセイをレビュー

目次

この本はどんな人におすすめ?

ワインを“初めて”学びたいと人にピッタリ!

『黄金の丘で君と転げまわりたいのだ』のテーマは
「ワインを深く楽しく味わえる舌を持とう」というもの。

このテーマに沿って、テイスティングの基本や、味覚の育て方が初心者にわかりやすく書かれています。

また、私が“初めて”ワインを学ぶ人に勧めたい理由は以下のとおり。

本書が初級者向けである理由
  • 登場する受講者が全員ワイン超初級者(三浦さん曰く、ワイン舌丁稚)
  • 初歩的な疑問の解説が多い

逆に言えば、すでにある程度ワインを学んでいる方にとっては、やや物足りなく感じるかもしれません。

三浦しをんファンも必読!

本書には三浦さん独特の文体、いわゆる「しをん節」が随所に出てきます。

独特なフレーズや言い回し、セルフツッコミなど、三浦さんのエッセイを読んだことがある方にはお馴染みですね。

登場人物たちも愉快なキャラクターで、彼女たちの軽妙なやり取りがワインへの「学び」のハードルを下げてくれます。

本書の特徴

エッセイ×ワイン入門のハイブリッド

語り口はエッセイ、内容はワインの入門書。
ですので、

  • 三浦しをんのエッセイが読みたい
  • 初心者向けにワインを知りたい

どちらのニーズにも応えてくれます。
私自身、「三浦さんのエッセイが好き。さらに、ワインを学びたい」と思っていたので、まさに“渡りに船”でした。

ワイン教室というより「ワイン対談」

「ワイン教室」と聞くと少し堅苦しい印象がありますが、本書の空気感はとてもカジュアル。
むしろ、「楽しいワイン談義」の場に居合わせている感覚に近いです。

講師の岡元先生は丁寧に解説してくれますが、三浦さんをはじめとした生徒の方々は砕けた様子。
その真剣さと軽妙さの緩急が本書の魅力であり、ワインへの敷居を良い意味で下げてくれます。

著者について

“三浦しをん”ってどんな人?

作家として多くの作品を世に出している三浦さん。
最近ドラマ化した話題作『舟を編む』などで知られていますが、
本書では“ワイン舌丁稚”として、編集者とともにワインを学びます。

独特な筆致はワイン談義でも発揮されます。
「夜空に輝く青白い星のように、硬質かつ熱を秘めた舌触りだ!」
といった素敵な言葉を言うこともあれば、
「ゲヴェルツトラミネール(葡萄の品種)」を「ゲブトラ」と略したり……。

思わず笑ってしまうような文章が、本書の、そして三浦さんの魅力です。

岡元麻理恵さんの魅力

岡元先生はワイン&食文化研究家で、ワインの講師歴も豊富な専門家。
初心者に寄り添ったやさしい説明をしてくださいます。

また、講義中に交わされる三浦さんたちの突飛な発言にも動じず、優しくフォローしてくれる姿勢が印象的です。

ちなみに、そんな岡元先生にも“苦手なこと”があるようで……。
そこはぜひ本書で確かめてください。

おすすめポイント3選

1 楽しく学べる!

前述のとおり、本書はワイン教室というより対談、学術書というよりエッセイ。
「ワインを学ぶぞ!」と身構えずとも、知識を得られます。

そんなワイン対談の中では、

  • 数種類のワインを、値段の高い順に答える
  • ワインの産地を当てる

など、ワインならではの問題が出題されます。

その問題に挑むワイン舌丁稚たちの賑やかな様子がなんともおかしく、
読者もその場にいるかのように心が弾みます。

2 知識ゼロから「味わう力」が鍛えられる本

みなさんは普段の食事で美味しいものを感じた時、どう表現していますか。
単に「美味しい!」と言う方もいれば、「海鮮系の旨みが効いていて…」と気の利いた言葉を述べる方もいると思います。

本書では、「美味しい」という感覚を「自分なりに伝える」方法が学べます。
ですが、美味しいと一口に言っても、その中には“香り”も含まれていたりと複雑です。

特に、ワインの感想を伝えるには「ワイン用語」を用いるのがベストですが、それは初心者には難しいこと。
ワイン舌丁稚の方々も苦戦しています。

そんなワイン舌丁稚たちの歩み方、そして、岡元先生の超初級者への説明を読むことで、読者も少しずつ味わいを表現できるようになります。

また、特にワインの香り”の表現方法については「3つの行動」として示されています。
ネタバレになるので言えませんが、一読の価値がありますよ!

3 ワインを選ぶ参考書としても○

三浦さんが執筆し、岡元先生が監修したワイン図鑑が各章ごとに掲載されているので、「自分に合うかも?」といったワインが見つかります。

また、その三浦さんが書く各銘柄の特徴が巧妙です。味わいを想像しやすく表現したり、ワインの雰囲気によってあだ名をつけたり……。

ワイン図鑑にも“しをん節”が出てくるあたり、流石としか言えませんね。

まとめ

エッセイとワイン入門書が融合した本書。
本書はワインをどう“上手く語る”かより、どう“楽しむ”か、を教えてくれます。

その楽しみ方も人それぞれ。
「美味しさを共有するため」なのか「より深く味わうため」なのか。

肩肘張らずにワインを学べる内容ですので、
三浦さん好きはもちろん、ワインを学び始めたい方もぜひご一読ください。

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この記事を書いた人

ソウイヌ管理人

創作と犬が大好き
よく読み、よく観て、
よく撫で回すがモットー

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