
2026年2月に映像化が決定している話題作『ほどなく、お別れです』。
“葬祭プランナー”に焦点を当てた少し珍しいテーマで、
生者と死者の関係を描くとなると、読む前から泣ける予感がしますね。
(私はもちろん泣きました)
こんな人・こんな時にオススメ
- 職場や学校で嫌なことがあって泣きたい人
- 生きる“活力”が欲しい人
- 静かな夜、その一部になりたいような落ち着いた日
私が好きなポイント
「生死」を語る話は重くなりがちですが、本作はどこか明るい物語です。
あらすじ
大学生・清水美空は葬儀屋でアルバイトをしている。ある日、毒舌で実直な葬祭ディレクター・漆原礼二と出会う。彼はさまざまな事情を抱えた“訳あり”の葬儀ばかりを担当するスタッフだった。
清水には、人には見えない“気”を感じ取る繊細な感覚があり、漆原はその能力に目を付ける。そして、ふたりで故人と遺族の想いに寄り添っていくことに。
葬儀を通じて様々な人、想いに触れて清水自身も成長していく――。
感想
暗くなりすぎない“別れ”の物語
本作の一番の特徴であり魅力が、
「生と死を扱っているのに、不思議と明るい話」という点。
「葬儀」と聞くと、鯨幕や黒のスーツなどを思い浮かべて、暗く重いイメージを抱く方は多いのではないでしょうか。
もちろん、本作も“生”と“死”、“遺される人”と“往く人”の関係性を書く以上、影の部分はあります。
ですが、いや、だからこそ、色濃く映し出される“生死”の物語に、爽やかな涙を流すことができます。
登場人物の魅力
本作の中心となるのはこの二人。
- 清水美空:葬儀屋でアルバイトをしている大学生。“気”を感じる、いわゆる霊感の持ち主。
- 漆原礼二:“訳あり”の葬儀を多く担当する葬祭ディレクター。歯に衣着せぬ物言いながらも、周りからの信頼は厚い。
力を合わせて、“送る人”も“送られる人”も満足がいく葬儀にしていきます。
漆原の厳しさの中にある温かさ、美空のまっすぐな成長。
生命の物語だけに留まらない、人間ドラマの面もあります。
読みやすい文章
個人的に人に本を勧める際に重要視する点のひとつが、
文章の「読みやすさ」です。
本作は句読点が程よくあり、スラスラと読めます。
また、難しい漢字もありません。
葬儀の用語が出てきても、物語の流れを邪魔しないように適度に説明されるので、
手を止めることなく読み進められます。
おわりに
『ほどなく、お別れです』は、「死」や「別れ」といった重たいテーマを扱いながらも、
私たちの日常の延長線にある“命”の物語として、どこかやさしく、温かく描いてくれます。
ただ泣けるだけじゃない。
“生きていく力”を、そっとくれるような作品でした。
感情の揺らぎ
没 入 感
キャラの魅力
総 合 評 価