【鮎川哲也賞受賞作】禁忌の子(山口未桜著)医療✕本格ミステリー 自分と瓜二つの遺体、その驚くべき結末!(ネタバレなし)

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今回は、『禁忌の子』(山口未桜著)ご紹介します。

まったく予想ができない展開に息つく間もなく、本書を読み終えました。

読みながら飲もうと思っていたコーヒーが、
手を付けられずに残るほど夢中になる本格ミステリーです。
(センシティブな内容もあるため、読み手を選びそうとも感じました)

あらすじ

救急医である武田航のもとに、溺死体が搬送される。
その遺体は、武田と瓜二つの容貌をしていた。

兄弟のいない彼には心当たりがなく、
頭脳明晰な同僚・城崎響介と共に調査を開始する。
二人の調査が暴き出す、武田と溺死体の関係、そのルーツとは——。

感想

惹き込まれる冒頭

冒頭は、溺死体が搬送された、緊迫する救急医療現場から始まります。
武田航と同僚たちのテンポ良い連携が、軽快に物語の世界に浸らせてくれます。
そして、その遺体が武田と瓜二つであると判明した瞬間、物語は急ブレーキ。

この緩急で一気に惹き込まれました。

豊かな感情表現

武田と溺死体、瓜二つである関係性の謎が明らかになるにつれて、登場人物たちに様々な感情が入り乱れます。
武田と遺体、その二人の関係性の調査で終わるかと思いきや、調査は彼らを取り巻く周囲へも波及していく。

謎が次第に明らかになっていく上で、登場人物の切ない心情も判明します。その心情表現が独創的で、私に突き刺さりました。

人物たちの思いにはせ、何度涙ぐんだことか……。

笑える要素が散りばめられている

著者の個性あふれる部分があり、物語の中途で笑えるため、そういった点でも読者を飽きさせません。

特に印象的な部分は、武田が、遺体と瓜二つであると気づく場面。
通常であればシリアスな状態で物語が進行すると思います。ですが、本書では少しだけクスッとなる表現があることで、重苦しさを軽減して読みやすくされています。

禁忌の子の意味について

物語の核の中の核、著者のメッセージが「タイトル」においても表現されています。
それを理解したとき、この本は「ミステリー」というジャンルだけでなく「ヒューマンドラマ」的側面も持ち合わせていると感じました。
ちなみに、物語の舞台は近畿です。

おわりに

本書を読んで感じたポイントを、星で表現しました。

ミステリー度   5.0
異 質 具 合  5.0
文章の美しさ   3.0
総 合 評 価  4.0

謎が謎を呼ぶとはまさにこのこと、と思えるような作品でした。
ミステリーと医療が融合するとここまで、異質な物語になるとは思わず、本を読み進める手が止まりません。

センシティブな内容があるため、万人におすすめができない点はありますが、ほとんどの人にとって、手に取って後悔はない作品だと思います!

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