「このミステリーがすごい!」大賞<大賞>受賞作
2025年「このミス大賞」を受賞された『謎の香りはパン屋から』。
クロワッサンのようにさくさく読めて、心の奥を満たしてくれる
万人におすすめできる小説です。
謎解きの爽快感もありつつ、本格ミステリーよりも気軽に読めるので、
「ミステリー小説を読みたいけど、重厚感のある話はちょっと……」
という方に一番刺さる作品です。
おすすめポイント
“日常の謎”を解くミステリー
主人公・小春が日々起こるさまざまな出来事を小さな違和感から紐解いていく物語です。
友人の隠し事からひったくり犯の正体まで。
彼女の鋭い観察眼が、“日常”に潜む謎に迫ります。
軽快に読める文体
整頓された文章・物語は非常に綺麗で読みやすく、まるで陳列棚のパンのよう。
「本を読むぞ!」という意気込みは不要で、自然と読み始めてしまう。そんな軽妙なお話です。
難しい文章はなく暗いお話もないため、お子さんへのプレゼントにもおすすめです。
あらすじ
主人公・市倉小春はパン屋『ノスティモ』でバイトをしている大学一年生。
ある日小春は、バイト仲間で高校時代からの親友・由貴子から予定をドタキャンされてしまう。
——彼女から誘ってきた大切な予定なのにどうして?
疑問を持った小春は、由貴子の些細な行動から意外な真相に辿り着く。
身の回りで起こる“謎”を解き明かしていく、全5話の連作短編集。
感想
冒頭から始まる美味しい謎解き
物語の開始数ページで、始まる小春の謎解き。
日常の些細な問題とはいえ、理論立てて順序よく語られる彼女の推理に惹きこまれます。
また同時に、物語に関連するパンの豆知識も得ることがきるため、1話で2度美味しい構成となっています。
短編集のため読みやすい
隙間時間の読書にもってこいな本作。
全5話で構成されている物語は、1話が約50ページ弱とちょうど良い文量です。
また、平易な言葉で語られるため、すらすらと読み進められるのもポイント。
あたたかい表紙イラスト
表紙イラストは漫画家兼イラストレーター・出水ぽすかさんによるもの。
アニメ化や実写映画化した『約束のネバーランド』の作画を担当されていました。
やわらかな雰囲気が、作品全体のトーンと調和しています。
また、読み終えた後に見返すと陳列されたパンの種類にもこだわりがあることが窺える表紙です。
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おわりに
『謎の香りはパン屋から』は、サクッと読めて、
満足な読後感を残してくれます。
奇をてらわないストーリー。整った文章。
肩の力を抜いて楽しめる要素が詰まっています。
日々の疲れを癒してくれる物語。
読書が苦手な方にも安心しておすすめできる作品です。
ミステリー度
キャラの魅力
総合評価
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