【長編本格推理小説】黒祠の島(小野不由美著)-島の異質な因習に隠された謎

おすすめ

こんにちは、式部です。

今回は、『黒祠の島』(小野不由美著)ご紹介します。

私は数ある小説の中でも、小野不由美さんが描く世界が
一番好きです。
『屍鬼』『十二国記』『営繕かるかや怪異譚』など、
著者の重厚な世界観やその語り方が、私を魅了して止みません。

本書も期待を裏切らない、大満足な作品でした。

あらすじ

作家やライターの取材を補助する調査事務所を営んでいた主人公、式部剛。
ある日、懇意にしていた作家、葛木志保が事務所へ訪ねてきた。彼女は「3日で戻る」と言い残し、行方不明になってしまう。

「葛木は捜して欲しいのだ」と感じた式部は、残されたわずかな手がかりをもとに、彼女の故郷である「夜叉島」にたどり着く。

夜叉島には怪しい慣習があり、偏屈と称される島民たちが暮らしていた。
島民たちが隠すものとは一体何なのか。
そして、葛城はどこへ消えてしまったのか——。

感想

謎がゆっくりと……

本書は、著者が得意とする(私が勝手に思っている)
「忍び寄る怪奇」が、じわじわと読者を包み込んでいきます。

主人公の式部は、舞台である「夜叉島」の島民は「偏屈」であると聞かされていました。
いざ、渡航してみると、意外にも邪険にされる様子はありません。
しかし、奇妙な風習や式たりに触れるうちに、徐々に「謎」が姿を現します。

島の領主を取り巻く事件。居るとも居ないとも言えない、「守護」と呼ばれる存在。

葛城の失踪と島の風習との因果関係が解明されたときには、その異質さに震えました。

重厚な表現

式部の心情を表すように、周囲の状況が鮮やかに書き出されています。
特に印象に残ったのは、式部が領主と対談した後の表現です。

「秋空は淡く紫紺を帯び、鬱蒼とした樹木と重々しい屋根に囲まれた庭には一足早く薄暮れが漂っている」
                             (小野不由美『黒祠の島』より)

生い茂る樹木が、綺麗な空模様(日が暮れる少し前)を遮ることで、先が見通せない式部の心情が見事に表されていると感じました。

スロースターター

私が小野不由美さんの著書を読んでいる際に高確率で思うのですが、
序盤が、少しだけ引き込まれにくい
印象があります。

序盤から、少しずつ、怪しい雰囲気を漂わせるからこそ、
中盤から加速度的に面白くなる!!
のですが……。

島や村などの閉鎖空間、その地域の因習や背景などを事細かに描写することで、
後半の、異様な出来事がより強調されます。

今でこそ、序盤もわくわくして読めますが、
学生時代には「山場はまだかな?」
などと不遜なことを考えておりました……(笑)。

全てを理解するには難しさがある

推理の際、「十二支」や「陰陽五行説」が登場します。
私は、十二支は諳んじることができますし、
五行説といえば、某忍者漫画のお陰でなんとなくはわかります。

しかし、なんと、この物語の推理部分では両方が組み合わさるのです!
例えば、「午は火」だったり、「丑は水」だったり。
五行説に十二支が割り当てられることは、知りませんでした。

「物語の核心」ではないとは言え、理解している方が楽しめるのでしょうが、
わからないからこそ、「島の風習が異質なもの
と捉えられ、怪しげな雰囲気をされに楽しめるとも言えます。

おわりに

本書を読んで感じたポイントを、星で表現しました。

ミステリー度   4.0
異 質 具 合  5.0
文章の美しさ   5.0
総 合 評 価  4.0

総合は星4の評価です。

異様なまでの因習が織りなす物語は、
読後に「罪」と「罰」、そして「法(自然法)」
の関係性を改めて考えさせるものでした。

本書は、ネタバレありで語り尽くしたいので、
別の記事で感想を書き綴りたいと思います。
よろしければ、そちらもお願いします!

読書家の皆さんには、間違いなくおすすめできる作品ですので、
ぜひ読んでください!!

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