伊坂幸太郎著『死神の浮力』をご紹介します。
前作『死神の精度』に連なる物語。
といっても、短編集ではなく長編として描かれています。
本作の魅力は、人間とズレた感性を持つ死神・千葉のユーモア溢れる?言動です。前作同様、とても楽しませてくれます。
前作を読んだ方も、読んでいない方も、どちらでも楽しめる物語です。
ミステリー度
ユ ー モ ア
意 外 性
文章の美しさ
総 合 評 価
あらすじ
娘を殺された山野辺夫妻は、逮捕されながら無罪判決を受けた犯人の本城への復讐を計画していた。そこへ人間の死の可否を判定する“死神”の千葉がやってきた。千葉は夫妻と共に本城を追うが——。
(本書裏表紙より)
感想(ネタバレなし)
相変わらず面白い死神・千葉
「死神」シリーズの一番の魅力といったら、やはり、人間とはズレた感性を持つ千葉の発言でしょう。本作でもユーモア(?)溢れる発言が読者を楽しませてくれます。
「良心がない人間」を「両親がない=クローン人間」と解釈するなど、クスッと笑える言動は本作でも健在です。
中心人物・山野辺遼の印象
本作の中心人物である山野辺。偉人の言葉を用いることが多く、自分の言葉で話さない印象です。また、大事な場面でやらかすことも多い人物でした。
そのため、私個人としては、あまり好感度は高くありません。
間延びしている感が否めない
人間の審査期間は「7日間」という設定のせいで、物語が全体的に間延びしていると感じられました。
千葉が何かをやらかすことは、感性がズレているので仕方ないにしても、山野辺夫妻の失敗に対しては「もっと警戒しようよ?」というもどかしさが多くあります。
焦りや悲しみなどの“気持ち”だけでは夫妻の行動に納得できず、物語(7日間の調査)を続けるためだけの失敗としか思えない点は少し残念です。
おわりに
前作同様、シリアスとユーモアが融合した面白い作品でした。
しかし、前作の方が“濃密”な物語でしたので、少し物足りなさが滲みます。
とはいえ、伊坂幸太郎作品のファンや、ミステリーにユーモアが加わった作品が好きな方にはおすすめの一冊です。