伊坂幸太郎著『死神の精度』をご紹介します。
タイトルに「死神」という言葉があるので、暗くて重い物語を想像するかもしれません。
しかし、その言葉とは裏腹に、死神・千葉の「人間とはズレた感性」が物語を喜劇へと昇華させます。
ミステリー度
ユ ー モ ア
意 外 性
文章の美しさ
総 合 評 価
こんな人にオススメ!
クスッと笑いたい人
本書は難しい言葉や凝った比喩表現を多用せず、シンプルな文章で綴られています。
死神・千葉が発する「ズレた発言」が、人々の普段の会話に潜む違和感を浮き彫りにし、思わず笑ってしまう場面が多くあります。
(私は声を出して笑ってしまったので、本書は人目につく場所で読まない方が吉かもしれません。)
気軽に読める本を求めている人
6つの短編で構成されている本書。各話は50ページ前後ですので、通勤・通学の合間や、ちょっとした空き時間にも読みやすい作品です。
あらすじ
①CDショップに入りびたり②苗字が町や市の名前であり③受け答えが微妙にずれていて④素手で他人に触ろうとしない——そんな人物が身近に現れたら、死神かもしれません。一週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌八日目に死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う六つの人生。
(裏表紙より)
感想(ネタバレなし)
ユーモア溢れる?死神・千葉
千葉は、私たちが何気なく口にしている言葉に疑問を投げかけます。死神ゆえなのか、彼が単に抜けているのか。そのユーモアさが本書の一番の魅力です。
例えば、「甘くみてはいけない」という表現に対して「味があるのか」と言うなど、その発想はなかった!という言動が多くあります。
各話が独特の余韻を残す
死神は担当する人間の「死」の可否を決めます。各話ごとに異なる人物が対象となりますが、必ずしも結末に死の描写があるとは限りません。そのため、登場人物が最終的にどのような運命をたどるのか、周囲の人々はそれをどう受け止めるのか——読者はその先の物語を想像しながら、独特な読後感に浸ることができます。
死を考えさせられる
千葉は調査の対象者へ「死ぬことが怖いか」を尋ねます。この質問に対する各人物の答えが、それぞれの死生観を浮き彫りにすることで、読者にも「死」について考えるきっかけを与えてくれます。
おわりに
本書はシリアスなテーマの中に散りばめられたユーモアが絶妙に融合した一冊です。難しい言葉が少なく、普段あまり小説を読まない方でも、スッと物語に入り込める作品となっています。
また、特異な笑いの出どころによって、声を出して笑うことが何度もありました。
読む際は、周囲にお気をつけて読むようにしてくださいね。
「死」を題材にしながらも、暗すぎず、むしろ「死」に対して前向きさせてくれる作品でした。
気になった方はぜひ読んでみてください!