『ついでにジェントルメン』は、7つの短編からなる物語。それぞれの主人公が、自身の世界を守るために奮闘します。
ある者は「自身の世界」、またある者は「過去の誉れ」。
個性的な人物に阻まれながらも、自らの信念を貫く姿は、読者に生きる勇気を与えてくれます。
ストーリーの面白さ
文章の美しさ
読みやすさ
総 合 評 価
こんな人にオススメ!
元気になりたい、前向きになりたい方
主人公たちは時に自分と向き合い、時に向き合わされて成長していきます。その過程で語られる言葉の数々には、前向きになれる想いが込められています。
特に、本作は他の小説と比較して著者を身近に感じられる作品です。著者自身が読者を励ましてくれる、希望をくれるような感覚は、あなたをきっと元気にしてくれるでしょう。
感想
憎めないキャラクターたち
本作に登場するのは、一見すると好ましくないキャラクターばかり。
冷淡な担当編集、不倫三昧の作家、豪快な大食らいの女性……。
彼、彼女らは最終的に、自らの行動を省みたり、周囲に影響を与えたりすることで、どこか魅力的な存在へと変化していきます。憎めないどころか、むしろ好ましく思えるようになるのが不思議です。
フェミニズム色が強い物語
本作に登場する男性キャラクターは、嫌味な性格だったり、頼りない弱者だったりと、やや情けない描かれ方をしています。
一方で、女性キャラクターは、最初は弱々しくても成長していく者だったり、持ち合わせの強かさで男を圧倒する者など、芯の強い人物が多いのが特徴的です。
解説でも語られていますが、これは著者の意図的な演出です。意図的とはいえ、好ましく思えない読者もいるかもしれません。
著者が近くに感じられる
本作は、他のどの作品よりも著者を近くに感じられる作品です。
著者が普段何を考え、どういった行動をしているかを読み取れる描写が多く、躍動する筆致まで感じ取ることができます。
「作品の奥にいる著者の気配が感じられる」という点は、“物語性(フィクション)”と“没入感”が薄れるという意見もあると思います。
しかし本作では、「著者自身の声を聴くことができる」ゆえに「読者の人生を前向きにしてくれる」力があると感じます。
おわりに
7つの短編を読み終え、さらに解説(菊池寛氏による!?)まで目を通せば、本作のタイトル『ついでにジェントルメン』に込められた意味がわかります。
痛快なストーリーの中で読者は、主人公たちと共に自らを励まし、省み、成長していくことができる作品です。
ただし、男性読者にはやや厳しい側面も。なぜなら、本作においてジェントルメンは「ついで」に過ぎないのですから。