「笑い」と「感動」に満ちたストーリー
https://books.rakuten.co.jp/rb/17844793/
タイトルに「死」と入っているため、暗くて重い話を想像するかもしれません
しかし、実際には笑いの要素が満載。とにかくよく笑わせてくれる青春小説です。
物語の大半は、男子校の生徒たちによる軽快な会話劇。
そのため難しい表現は一切なく、読書が苦手な人でもスラスラと読み進められます。
おすすめポイント
ですが1点、気に留めて欲しいことがあります。
男子校特有のテンションで繰り出される下ネタの応酬。それが本作の魅力でもあり、読者を選ぶ要素でもあります。
あらすじ
夏休みが終わる直前、クラスの人気者の「山田」が亡くなった。飲酒運転の車に轢かれて。
悲嘆にくれる2年E組だったが、2学期初日、教室中に山田の声が響く。
「山田、お前スピーカーになったのか?」
<いや、スピーカーになるってなんすか?>
声だけになった山田と、2年E組の不思議な日々がはじまった——。
感想
会話のテンポとキレが最高
登場人物の掛け合いがとにかく面白いです。
テンポの良さ、ツッコミのキレ、予想外のボケ。
お笑い芸人のコントと遜色ありません。
ただしそこは男子校の会話。どこからともなく下ネタが湧いてきます。
意外な角度から降ってくる下ネタに、さらに笑いが加速されるのです。
しかし、一転して夜の校舎では孤独になってしまう山田。
夜の孤独と日中の盛況のギャップが、物語に緩急を与えます。
普通の日常会話のよう
本作の大部分が山田とクラスメイトの会話で成り立っています。
男子校を覗き見ているような感覚になるこの物語に、あなたも笑うこと間違いありません。
彼らの会話を読んでいると、男子校出身ではなくとも、ありもしなかった高校生活が頭の底から湧き上がってきます。
視点が独特
小説では、一人称視点(語り手が私や俺)や三人称単一視点(誰かひとりの視点から俯瞰的に語る)の形態をとるものが多いです。
しかし本作は、登場人物全員の表情や心情を自在に描くことができる三人称全知視点。スピーカーに憑依した山田という特異な存在が、客観的かつ多角的に描かれることで、より際立って感じられる構成です。
あまり目にしない視点で語られる文章が、斬新な設定の本作をさらに引き立てます。
(「視点」を詳しく知りたい方は、『マナーはいらない 小説の書きかた講座』(三浦しをん著)をぜひ読んでください)
おわりに
本作の中心は「会話」です。事件が起きるわけでも、大きな謎があるわけでもありません。それでも読む手が止まらないのは、登場人物たちのやり取りがとにかく魅力的だから。
日常系・会話劇・男子校のノリ。これらのキーワードに惹かれる方には、自信を持っておすすめできます。
……さて、2年E組の生徒たちが進級したら、卒業したら山田はどうなるのでしょうか?
本作を読み、ご自身の目で確認してみてください。
ミステリー度
没 入 感
キャラの魅力
総 合 評 価